これ、切ないラブストーリーだったけ?「ドラゴン・タトゥーの女」
ミステリーだと思って観に行ったらラブストーリーだったんだよ!
ざっくりストーリー解説
雑誌ミレニアムの記者であるミカエルは偽の情報をつかまされたことで訴えられ、敗訴になってしまう。窮地に立たされた彼にとある大富豪からの依頼が舞い込む。それは四十年前に少女を殺した犯人を捜してほしいというものだった。
メインはドラゴン・タトゥーの女だけど、ちょっと違う・・・?
デビット・フィンチャー監督でミステリーなんて聞くと“セブン”を連想されて観に行った方も多いんじゃないでしょうか。実際、僕もそうだし途中まではそうだったんですが、全て観終ると・・・これはどう考えてもラブストーリーにしか思えないんです。
確かに話の見どころは四十年前に殺された少女の事件です。憎しみ合う一族、閉ざされた島、いなくなった少女なんてミステリーファンなら聞いただけでニヤニヤしそうな要素でいっぱいなわけですが、裏を返せばありふれた題材とも言えるわけで新味はありません。
謎と推理をテンポ良く飽きさせずに見せてはくれるんですが、これだけだったら物足りなかったのではないでしょうか
それでは本作の肝は何なのかと言ったら、それはタイトルにもある通り“ドラゴンタトゥーの女”、リスベットに他ならないんです。
黒の革ジャン、奇抜な髪形、顔のところどころのピアス。バイクを乗り回し、天才的なハッカー。
一見、漫画的なキャラクターなんですがぼんやりと見えてくる彼女の苦悩、そして“恋心”がこのキャラクターをただ特異なわけでもただかっこいいわけでもないキャラクターに昇華していると思います。
フィンチャー版とスウェーデン版の違い
特にこのフィンチャー版においてはこの“恋心”がもっとも重要な要素になっていると思います。
フィンチャー版とスウェーデン版を比べると決定的に違うのはミカエルのキャラクター、そしてそれによる二人の関係性。
具体的に何が違うのかというとそれはミカエルの女性関係。スウェーデン版ではミカエルと編集長の不倫はほんのさわり程度しか触れられていません。しかしフィンチャー版では具体的に描写されています。
スウェーデン版においてミカエルはリスベットに対してとても好意を持っています。そしてそれをリスベットが彼女なりの方法で受け入れるまでの話でした。
しかしフィンチャー版ではどうでしょうか。
二人の関係の変化を表す描写はそこらかしこにあります。例えば初めて二人が出会ったシーン。リスベットはミカエルを警戒し、自分に触れたらスタンガンを使うと脅します。しかし終盤では触ってくれと彼に頼みます。
萌えキャラ?
他にも二人が初めて出会ったシーンでミカエルは朝食を用意しますがリスベットは手を付けようとしません。しかし二人が一夜を過ごした朝のシーンではリスベットが朝食を用意しています。
まぁつまりいわゆるツンデレってやつです。もっと言うとつんけんしてたのは最初だけで後半はほとんどデレデレしっぱなしです。萌えですね。
そう思ってみると萌え要素はとても多いです。ミカエルが家に来て焦るリスベット、寝てる間にパソコンの中の写真を見てるリスベット。これを萌えキャラと言わずして何を萌えキャラというのでしょうか。
二人がお互いの関係を聞かれるシーンが何回も出てきます。答えはどちらも恋人ではないというものでしたが答えの中に隠れる二人の真意は異なるものであったように僕は感じます。
そして真相が分かったあとの長めのエピローグ。彼女がする行動はまぎれもなく彼のため。しかしその想いは・・・・
最後に
映像センスとストーリーの斬新さで名を馳せたデビット・フィンチャーの最新作は不器用な一人の女性の切ないラブストーリーでした。ぜひ彼女に幸せになってほしいですね。