映画の感想をダラダラと

映画の感想をダラダラと書いていきます。

スコセッシから映画へのラブレター「ヒューゴの不思議な発明」

ヒューゴの不思議な発明

(C)Paramount Pictures 2011

映画への愛が詰まった至高の映画。

ざっくりストーリー解説

駅に住み、駅の時計の修理を行っているヒューゴ。あるとき父の形見の機械人形を直すため、盗みに入ったおもちゃ屋で亭主のメリエスに捕まってしまう。

3Dへの疑念

鑑賞当時正直3Dには懐疑的でした。

巷で氾濫する3D映画。映画表現の新たな形として、もてはやされているこの技術だけど、僕はどうも馴染めませんでした。だって「3Dだ!立体だ!」と言っても結局のところ人物や建物それぞれを切り取って貼り付けた“飛び出す絵本”を映像でやっているだけだろうと思っていたわけです。(まあそれを言っちゃ元も子もないことは分かっていますが)

それにさも新しい技術のように言われてるけど、昔からちょっとさびれた遊園地でも普通に3D映像は見れたわけで、何を今さら感がありました。

そんなこんなで「アバター」も見逃して(ちなみに羽田あい主演の「GAL AVATAR」は見ました。まあ全く3D要素はありませんが、青い羽田あいは必見です!)、今回もマーティン・スコセッシと言えど、そこについては一切期待していませんでした。

オープニング。パリの街並みから駅へのシークエンスを見たとき、口から「うおお!」という声が出そうになってました。

誇張でもなんでもなく、このほんの一分の映像に千円払ってもいいと思えるくらいに、ここは素晴らしいです。もちろん、上で僕が書いたように“飛び出す絵本”のような絵を切り貼りした映像であることは間違いないんですけど、その密度がすごい濃い。まるで映画の中に吸い込まれるような凄い体験でした。

スコセッシの映画への愛

それじゃあ物語はどうか。これも最高の一言です。今回のテーマはそのものずばり映画愛なのは誰の目にも明らかだと思いますが、僕はそれと同時に全てのモノを作る人たちに対する賛歌なんだと思います。

僕もちょっとした作品なんかを作ったりする身なので、後半はもうずっと泣いてました。機械人形が動くシーン、映画館に忍び込んで映画を観るシーン、撮影スタジオに行くシーンの子供たちの表情がたまらない。

例えば初めて絵を見たとき、初めて音楽を聴いたとき、そして初めて映画を観たときに僕らが感じた感動。とにかくすごい。何がすごいのなんてよく分からないけど、それでもすごいと思ったあの感動。僕たちがモノを作ろうと思ったあの感動。

それがこの映画に詰まっている。

「映画を撮り続けて、何十年も経つけど俺は今も初めて映画を見たときの感動を覚えている。」

そんなマーティン・スコセッシの声が聞こえてきます。そしてそれは本当に素晴らしいことだと僕は思います。

割と個性的な役者陣

俳優陣もみんな良い味出してました。主役の男の子もベン・キングズレー良かった。サシャバロンコーエンはいつブルーノって言い出すんじゃないかとヒヤヒヤしたし、ヒットガールちゃんもいつベン・キングズレーに「このクソ親父!」って言って殺すんじゃないかと焦りながら観てましたが本当にそんなシーンはなくて良かった。

難点がないとは言いません。序盤のノートどうこうのくだりが未消化のまま、機械人形が直せちゃうとか、時計でのアクションとか、中途半端に感じるところがないわけではありません。でもそれでもこの映画の輝きはかすんでないと思います。

暴力と不条理を描いてきたスコセッシも高齢になり、失礼ながらこれから撮れる映画も決して多くないでしょう。この映画はそんな彼が作ったどうしようもないくらいの映画へのラブレター。

最後に

彼の感動はきっと観客に、子供たちに届く。そしてその感動がきっと新たな感動を作っていくのでしょう。